懸賞檄文【佳作】経済再生から憲法改正を/本多光雄

義挙50周年プロジェクトの一環として公募しました「懸賞檄文」において、厳正なる審査の結果、下記の文章が佳作となりました。ここに全文を掲載します。(福岡黎明社)

安倍総理が再び総理の座に就き、7年近く経過した。残り1年近くで任期満了になる。後継者が騒がれている中で、安倍総理は、残りの任期中に何度も憲法改正、更に国民投票をしたいと発信しているが、未だに道筋が見通せないというのが現状である。果たしてそれは憲法改正は可能なのか。安倍政権のこれまでの功績、失敗から考えてみたい。

安倍総理の功績とは何なのか?多くの保守派に問うと、第一次政権含め、おそらく教育基本法の改正、防衛庁の省への格上げ、安保法制等、歴史観、国家観が先頭に来るのではないだろうか。それは、政治家として基本的、普遍的に持つべきものであるが、ほとんどの国民は「消費税増税」と答えるだろう。なぜならば、経済は国民にとって密接に関わっており、切っても切り離せない分野だからだ。給料が減る、増えるは国民にとって生きるか死ぬかの世界なのだ。では、安倍総理が「消費税増税」を実施した際に、多くの保守派は反対の声を上げたのだろうか。「安倍総理だから大丈夫」・「安倍総理を信じよう」という信条に駆られ見て見ぬふりをしてきたのではないだろうか。私は何も安倍総理を否定しているわけではない。ただ、ダメな政策にはNoを突き付ける必要がある。憲法改正が今まで何も進んで来なかった原因は、野党にもあるし、とりわけ安倍総理を甘やかした保守派にも責任があるのだ。

私がなぜ経済に重点を置き話すのかと言えば、長期政権のカギは”経済“だからだ。安倍政権が、なぜ長期政権を築けたのか。決して安保法制や外交に力を入れたわけではない。20年以上続くデフレ不況の中で、リーマンショックで景気がさらに悪化、多くの雇用が失われた。私も就職氷河期の渦中にあり、就職策が決まらず卒業する羽目になった。そんな状況を打破するために、安倍政権はアベノミクスを掲げ、インフレターゲットを2%に設定、そして日銀改革を断行したのだ。リーマンショック時とは打って変わり、有効求人倍率も上がり、雇用創出を行う事が出来た。これから漸く景気が良くなるのではないかという期待感の中で、増税を行ったのだ。逆に言えば、たとえどんなに素晴らしい国家観を持っていようと、経済で失敗した政権は長続きしない。

結局コロナの経済対策でも右往左往してしまい、30万、お肉券等、国民にとっての印象が悪くなってしまった。初めから全国民に10万給付を打ち出せば良かったものを、財務省のアドバルーンに踊らされてしまった。結局、支持率を落とす結果を招き、国民不信の火種を招いたのだ。
デフレ不況の中で増税は愚の骨頂というのは、経済を知っている方であれば周知の如くである。しかし安倍政権は、デフレ不況の中で脱却できない中で、2度の増税を行ってしまった。インフレどころか、ますます消費を冷え込ませてしまう結果になってしまった。 

私が安倍政権では憲法改正無理だと確信した出来事は、1回目の増税である。増税を止めれなかった。安倍総理は、総裁になる前にテレビ番組で「消費税増税はしない」と述べておきながら、財務省に屈したのである。デフレという状況の中で、更に景気を悪化しかねない増税を行ってしまったのだ。一つの省庁に屈するような政権が、憲法改正など出来るはずがないと確信した。

それでは、安倍政権に限らず、安倍政権の後に続く政権でも、憲法改正の道筋を付ける為にはどうすれば良いのか。そのカギは、長期政権にさせる事である。つまり、経済対策では絶対に失敗出来ないという事である。多くの保守派は、財務省を悪だという事は理解しているだろう。だからこそ、景気を悪くするような政策には、Noを突き付けなければならない。改憲派には、その部分が足りていないのだ。

現在、国民運動団体が各地で憲法改正に向けて、講演を行ったり、国会議員への陳情を行っているだろう。一人一人の国民に対し、憲法改正の必要性を説く事は必要であるが、もう一つ大切なことを忘れている。それは、国民の政府への信頼・信用である。それを行う手段は、経済再生し国民の懐を厚くすることだ。2019年の増税により、10月から12月のGDPは年率換算‐7%落ち込み、更にコロナにより日本経済はかなり落ち込んだ。もし憲法改正の道筋があるとすれば、消費税を減税し、当面国債を発行してでも、消費を刺激するべきだ。私は、10万円の給付は数か月行うべきだと考えるが、苦しんでいる国民を救うのは政治の仕事である。

そうすれば、安倍政権の支持率も上がるだろし、多くの国民は安倍政権に感謝するだろう。残念ながら、第一補正予算のゴタゴタ、第二次補正予算では真水は増やすことが出来たが、どちらかと言えば企業優先である。国民への還元がどれほどあるか不明である。

コロナのような危機になった時こそ、経済対策は確実に行わなければ、批判の矛先は政権にくるのだ。

70年以上変わらなかった憲法を変えるというのは、莫大なエネルギーが必要である。護憲派、改憲派共に中間層の取り込みを行っているだろう。改憲派にとって、憲法改正の国民投票をやり易くする方法は、景気を底上げする事だ。ただ、会合を開くだけでなく、政治に訴え、国民の政権への信頼度を上げ、やり易い環境を作ることだ。

保守派は、毎回話に出るのは、安全保障や歴史問題、対中問題等であるが、経済の話は中々聞くことがない。国民生活において一番密接に関わる経済問題をなぜ論じないのか。例えば、米軍抜きで自国を自分の力で守るために費用な予算はいくらか知っているのだろうか。防衛大学校の試算では、25兆円以上である。毎年25兆円必要なのだ。拉致問題、安全保障等語るうえで、これまで精神論だけ語られてきた。確かに精神部分は必要であるが、それに伴って予算が確保されなければ何も出来ないのだ。簡単に自分の国を自分で守る、北朝鮮に特殊部隊を送れなど訴える人もいる。その考えには賛同するが、現在の状況で一番影響を受けるのは現場の自衛隊員である。現場が安心して活動できるように、我が国を経済成長させ、国家の財政を増やし、防衛予算を上げなければ意味がない。だからこそ、経済を無視することは出来ないのだ。

最後に、改憲派はもっと経済にも声を出すことだ。そして景気を良くする方法を考え、政権を動かすことだ。時には、政権に対してNoを突き付けることだ。たとえそれが、安倍政権だろうと。

英霊の思いを受け継ぎ、今の日本を守ろうと。そして未来の同胞の為に素晴らしい国を残そうと。多くの人が思っている事である。その為にも、今経済で苦しんでいる同胞を救わずして、誇りある国づくりが出来るだろうか。

今までの固定観念を捨て、経済再生から憲法改正を。

この言葉を残して、私の檄文を終わりにしたい。

(編注:文中の肩書き・情報は応募時点のものです)

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